長野県建設労連
2026年5月14日版

中東情勢の影響により、燃料油や石油製品、一部の住宅建材・設備の価格高騰や欠品といった現場の声が組合にも寄せられています。
建設労連の上部団体である全建総連では、国交省との懇談、住宅建材・設備需給情報連絡会議への出席などを通じ、現場の状況を共有し情報の収集を進めています。
ここでは、全建総連および国交省より周知依頼があった内容を中心にまとめています。

 

1.建築主への情報提供・価格交渉について

資材・設備等の価格高騰や供給の遅れにより、工期が延長となったり、価格転嫁できず経営を圧迫したりするおそれがあります。
着工済みの物件で工期や価格に影響が出る可能性がある場合は、早期に現況や今後の見通しを説明しておきましょう。おそれ情報の通知、合意書の活用、価格高騰をふまえた請負代金の設定などが重要です。

『新建ハウジング』値上げ・供給状況の情報

▼『新建ハウジング』による解説記事
4/3 “ナフサショック” 工務店がとるべき対応策
4/17 契約前の顧客に対する「おそれ通知」の重要性と書式例

▼合意書・書式例 (全建総連提供)
①「おそれ通知」の書式例
②合意書(請負契約締結時)_ナフサショック【通常版】
③合意書(契約済み顧客向け)_ナフサショック【通常版】

Q1.3つの書式は、どの場面で使えばよいのですか?

A.
工事の進行段階によって使い分けます。判断のポイントは 「顧客との契約が、まだか/ちょうどか/もう済んでいるか」 の3点です。

①「おそれ通知」 … 見積り提示後から契約締結までの間に、見込み客へ交付する事前説明書です。建設業法第20条の2第2項に基づき、価格高騰や供給遅延の 「おそれ」 があることを契約前に説明する書面です。

②「合意書(請負契約締結時)」 … 請負契約を締結するそのタイミングで、契約書と一緒に取り交わす合意書です。契約後に価格・工期の変更協議ができるルールをあらかじめ組み込んでおきます。

③「合意書(契約済み顧客向け)」 … 既に契約を締結してしまった顧客に対して、後から変更協議のルールを合意するための書式です。契約時に何も取り決めていなかった既存顧客との調整に使います。

つまり、これから契約する相手には「①」 →「②」 の順で、すでに契約してしまった相手には「③」 を、それぞれ使うイメージです。

Q2.「おそれ通知」は、必ず出さなければならないのですか?

A.
はい。建設業法第20条の2第2項により、受注者には価格変動や資材の調達困難などの 「おそれ」 がある場合、契約締結前に注文者へ説明する義務があります。
今回の中東情勢による石油・ナフサ価格の変動は、この条文が想定する 「おそれ」 に該当し得るため、契約前の顧客には「おそれ通知」を交付しておくことが推奨されます。
書式の末尾に 「説明を受け、内容を確認した」 旨の署名欄が用意されていますので、お客様から署名・捺印をいただき、1通ずつ所持してください。後日、価格変更や工期延長を協議する際の重要な根拠資料になります。

Q3.「おそれ通知」と「合意書(請負契約締結時)」は、両方必要ですか?

A.
役割が違うので、原則として両方使うことを推奨します。
「おそれ通知」 は、契約前の「説明責任を果たしたことの証拠」です。
「合意書(請負契約締結時)」 は、契約締結時に取り交わす「実際に価格や工期を変更できる権利の根拠」です。
おそれ通知だけでは 「説明したこと」 しか残らず、実際に価格変更が必要になった際の契約上の根拠が弱くなります。逆に合意書だけでは、契約前の説明義務を果たした証拠が残りません。
流れとしては、見積り提示の段階で 「おそれ通知」 を交付し、契約締結のタイミングで 「合意書(請負契約締結時)」 を契約書と一緒に取り交わすのが理想的です。

Q4.すでに契約してしまった顧客がいます。どうすればよいですか?

A.
「合意書(契約済み顧客向け)」を使って、事後的に合意を取り付けることが可能です。契約済み顧客向けの合意書は、新規契約時の合意書と似ていますが、第2条が 「工事の変更・追加」 として仕様変更まで含めて明記されている点が異なります。既に設計・見積りが確定している契約について、資材の調達困難等により仕様の差し替えが生じる可能性に備えた条項です。
ただし、事後合意は 「お願いベース」 になります。顧客が合意書への署名を拒否するケースもあり得るため、本合意書が 「一方的な負担の押しつけではなく、双方の利益を守るための枠組み」 であることを丁寧に説明することが重要です。

Q5.合意書の第1条にある「●%を超えるとき」の空欄は、何%にすればよいですか?

A.
一律の正解はなく、工事規模や利益率、想定されるリスクに応じて設定します。
この数字は、価格変動・費用増加の総額が請負代金合計額の何%を超えたら 「対象事象」 に該当するとみなすか、という閾値です。
実務上は 3%~5%程度 を設定する例が多いですが、工事の内容や御社の利益率によって判断してください。低く設定するほど協議を申し出やすくなりますが、低すぎると顧客の同意が得られにくくなる可能性もあります。

Q6.合意書を結んでいても、顧客から「値上げは認めない」と言われたら?

A.
合意書の第5条により、協議開始から1か月を超えても合意に至らない場合、工事を中止または契約を解除することができます。
この場合、乙(受注者)は工事中止や契約解除に関する損害賠償義務を負わない旨が明記されていますので、 「泣き寝入りして赤字で仕上げる」 という事態を防ぐ法的な根拠になります。
ただし、実際にこれを行使する前に、まずは 「公的統計に基づく価格変動のエビデンス」 を示しながら誠実に協議することが大前提です。一方的な解除通告ではなく、協議記録を残しながら段階的に対応してください。

Q7.合意書を使う以外に、やっておくべきことはありますか?

A.
当初の請負金額を、あらかじめ高めに設定して利益率を確保しておくことも併せてご検討ください。
合意書は 「価格変動が顕在化した際の協議ルール」 を定めるものであり、協議には相応の手間と時間がかかります。また、顧客との関係悪化のリスクもゼロではありません。
合意書によるセーフティネットと、そもそも利益率を厚めに確保しておく経営判断の両面から対応することで、資材価格高騰に対する耐性を高めることができます。

 

2.資材・設備等の計画変更の手続き

価格高騰や供給の遅れにより、計画変更が必要となる場合があります。国土交通省は、計画変更の手続きの円滑化のため、建築基準法に基づく完了検査の柔軟な運用について、各都道府県に通知しています。
着工済みの物件で計画変更が必要になる場合には、通知の内容をご確認ください。

➢完了検査の柔軟な運用について(PDF)
 

3.情報提供のお願い

中東情勢悪化による県内事業者への影響に関するアンケート 回答期限:5月28日(木)
長野県では、県内経済及び企業への影響を把握し「国際経済 情勢に係る長野県連絡協議会」として迅速な対応策の検討を行うため、アンケートを実施しています。ご協力をお願いします。

中東情勢による建材価格高騰・入手困難等に関する緊急アンケート
全建総連では、「中東情勢による建材価格高騰・入手困難等に関する緊急アンケート」を実施しています。今後の要請活動等の資料となりますので、多くの仲間の声を届けられるよう、ご協力をお願いします。
➢アンケート第1回調査結果(4/27集計)(PDF)
➢アンケート第2回調査結果(5/8集計)(PDF)

「住宅分野情報提供窓口」の受付フォーム
国土交通省では、住宅建材・設備等に関する情報提供窓口を設置しています。提供いただいた情報は国土交通省・経済産業省・林野庁において、住宅建材・設備等の目詰まり、流通の偏りの解消に向けた取り組みに使用されますので、ご協力をお願いします。

中東情勢関連対策ワンストップポータル
国土交通省では、「中東情勢関連対策ワンストップポータル」を設置し、燃料油や石油製品等の供給、流通や取引の状況の影響について情報提供・相談を受け付けています。
 

4.資金繰り支援・その他の相談窓口

中東・ウクライナ情勢・原油価格上昇等に関する特別相談窓口
中小企業庁では、国際情勢や原油価格高騰などにより影響を受ける中小企業・小規模事業者を支援するため、全国約1,000箇所に「中東・ウクライナ情勢・原油価格上昇等に関する特別相談窓口」を設置しています。

経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)
日本政策金融公庫等のセーフティネット貸付(経営環境変化対応資金)では、一定の要件を満たす事業者に対して金利の引下げを実施しています。

対象者

社会的、経済的環境の変化等外的要因により、一時的に売上の減少等業況悪化をきたしているが、中長期的にはその業況が回復し発展することが見込まれる中小企業・小規模事業者

対象要件

最近3ヶ月の売上高が前年同期または前々年同期に比べて5%以上減少 等
⇒特別相談窓口が設置された災害・事象による影響を受けた場合、数値要件を満たさずとも、資金繰りに著しい支障をきたしている又はきたすおそれがあれば対象

制度内容

➢対象資金  設備資金及び運転資金
➢貸付限度額 中小企業事業:7億2,000万円
       国民生活事業:7,200万円
➢貸付期間  設備資金20年以内、運転資金10年以内
➢据置期間  3年以内
➢貸付利率  基準利率 ※
下記の要件に該当する場合は0.4%を控除
原油価格上昇をはじめとした原材料・エネルギーコスト増の影響若しくは中東・ウクライナ情勢の変化の影響を受けており、かつ、最近における売上高、売上高総利益率または売上高営業利益率が前期に比し5%以上減少している方 等
※適用利率は担保の有無や信用リスク等により異なる

申し込み・相談窓口

・日本政策公庫 各支店の窓口
・事業資金相談ダイヤル 0120-154-505 受付時間:平日9時~17時

*詳細はリンク先をご覧ください。 

雇用調整助成金
資材不足等により現場がストップし、従業員を休ませた場合、支払った休業手当の2/3が助成される「雇用調整助成金」制度があります。

取引かけこみ寺
中小企業庁では、企業間の取引全般に無料で相談対応する「取引かけこみ寺」を全国48か所に設置しています。

取適法に関する相談窓口
公正取引委員会では、「買いたたき」などの取適法に関する相談を受け付ける「不当なしわ寄せに関する取適法の相談窓口」を設置しています。

▼違反行為情報提供フォーム
公正取引委員会中小企業庁
公正取引委員会および中小企業庁は、「買いたたき」などの違反行為を行っている事業者の情報を匿名で提供できる「違反行為情報提供フォーム」を設置しています。